トビラシステムズ2021年10月期決算短信

個人的に注目している企業、トビラシステムズの2021年10月期決算短信が発表されましたので、内容について見ていきたいと思います。

トビラシステムズは迷惑フィルター事業を展開する、社会的意義のある企業。営業利益率も極めて高く、経済的な堀のある企業だと私は思っています。

今回の決算はどのようなものだったかと言うと…

売上・営業利益共に15%を超える程度の伸び。成長が続いているようですが…

残念ながら来期予想は増収減益予想となっています。売上は伸びていますので、成長が止まったわけではないようですが…どうしたのでしょう?今後の見通しには次のように書いてありました。

本気に買収した合同会社280blockerののれん償却費の計上が始まる、とあります。なるほど。今期企業を買収していたんですね。

さかのぼって調べますと、2021年8月31日に「子会社化」 IR が発表されておりました。

合同会社280blockerの持分取得に関するお知らせより

280blockerは iPhone のwebブラウザ「safari」で迷惑広告コンテンツをブロックする iOS アプリ。全有料アプリの中で2021年は第3位となるほど人気。

買収前の280blockerの売上は3800万円、営業利益は2700万円。トビラシステムズはその企業を3.77億円(アドバイザリー費用など込み)で買収しています。

その結果2021年10月末のBSには、のれんとして3.25億円計上されています。

2021年10月期決算短信より

のれんがどれだけの期間で償却されていくか、によって利益がどれだけ押し下げられるかがわかります(日本の会計基準では20年以内での償却)。

キャッシュフロー計算書によると2021年10月期末ではのれん償却額は約550万円。

2021年10月期決算短信より

のれんの償却が発生したのは8月の買収以降、つまり単純に9月、10月と考えられると思います。そうすると、来年ののれん償却額は、

550万円÷2カ月x12カ月≒3300万円

という風に予想することができます。

仮に来年営業利益が今年度と同じとすると、のれんの償却分が費用として引かれますから、 

5.79億円-0.33億円≒5.46億円

となるはずですが…来期の営業利益の予想は5.13億円…

のれんの償却によって利益が押し下げられていますが、それ以上に減益となっています。

売上は増加の予想なので、「のれん償却費以外の費用が増える」という予想になっているのがわかります。増えるのは変動費でしょうか?それとも固定費?

決算書には中期的な事業成長を加速するための投資を行う、と書かれていましたので、もしかしたら研究開発費などを見込む予定なのかもしれません。

2021年10月期決算短信より

来期の減益発表。これだけではネガティブですが、決算と同時に発表された決算説明資料の中では、中期経営計画が上方修正されていました(もちろん来年度は減益の予想ですが)。

決算説明資料より

このグラフはすごいですね。来年度は減益ですが、2024年は2022年の倍以上の営業利益をたたき出しています。 こんなに急激に成長できるようなものでしょうか?

トビラシステムズとプライム市場 

強気な中期経営計画を出したトビラシステムズ。よほどこの先のビジネスに自信があるのだなあと感じましたが、「2022年東証市場再編」という視点からトビラシステムズを見てみると、違った側面も見えてきます。

現在トビラシステムズは東証一部。当然2022年の市場再編においてはプライム市場上場を選択しています。

しかし現在の状況では、トビラシステムズはプライム市場基準を満たしていません。理由は流通株式時価総額が適合基準を満たしていないためです 。

プライム市場上場上場基準の適合に向けた計画書より

そのため2024年10月期において、目標時価総額300億円以上を目指す、と同日に提出した計画書には記載しています。 

この時価総額300億円以上というものがポイントになります。

トビラシステムズは2024年において PER 38倍となっていることを前提に、時価総額を以下のように計算しています。

時価総額= PERx 当期純利益

よって、 2024年当期純利益を8億円に設定することで、時価総額300億円を達成できる計画となります。

心配なのは、この中期経営計画が、「2024年に8億円の純利益ありき」で作られたのではないか、ということです。邪推すると次のような流れになります。

①プライム市場上場したい!

②でも流通時価総額が足りない…

③流通時価総額を満たすために時価総額300億円が必要。

④それならとりあえず、2年後に時価総額300億円を達成する目標を立て、計画を東証に提出しよう。(計画が認められれば、とりあえずプライム市場に上場できるし。)

⑤ただし、300億円を達成するためには2024年に純利益8億円が必要だ…。

⑥とりあえず、2年後に純利益8億円を達成する、と言う数値目標に合わせて、2023・2022年の利益目標額を擦り合わせよう…

みたいな感じです。

今まで年率15%程度で成長してきた会社が、いきなり年率50%成長をするとも思えず…こんな邪推が頭をよぎりました。

もちろんトビラシステムズが計画しているように、トビラフォン事業が高成長を遂げ、なおかつM&Aも順調に進行する。そんな高成長なシナリオもあるにはあると思います。

ただし、 それを考慮しても2年後の PER38倍というのはかなり高い水準です。現在の PER は30倍を下回っていますし…

また気になった点が一つ。 役員人事内定に関するお知らせにおいて、CFOの後藤氏が退任されることが明らかになったことです。

 後藤CFOは今までトビラシステムズのIRにも積極的だった印象。健康上の理由により退任というところも心配ですが、 トビラシステムズのIRや 経営計画のあり方についても少なからず影響があるはずです…。

トビラシステムズが今後どのような舵取りをしていくのか、株主ではないですが引き続き注視していきたいと思います。

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