どんな本?
もう読んで字のごとく、世界や日本の倒産企業25社について書かれた本です。25社がどうやって成長したか、どのように衰退していった顔簡潔にまとめています。
どんな人が書いたの?
著者は荒木博行氏。1998年慶応技術大学法学部卒業。2015年グロービス経営大学副研究科長に就任。2018年株式会社学びデザインを設立。
ビジネススクールの教壇に立って、会社の経営についての戦略を建てたりしているそうです。
はじめに、に書いてあるように「先人たちの苦闘から学びを深めよう」ということをテーマにこの本を書いたそうです。
以下には、この本でまとめられていた倒産企業について、私なりに簡単にまとめてみます。
そごう
拡大から成功まで
百貨店として1960年代から頭角を現し、2000年に民事再生法を申請(倒産)。
急拡大したのは1962年に日本興業銀行出身の水島氏が就任したことがきっかけ。当時、大阪・神戸・東京の3店舗しかなかったそごうを地方に拡大する戦略をとりました。
目をつけたのは東京から近い千葉。しかし当時は大都市の象徴だった伝統的百貨店。社内からは、
「都市部から離れたくない」
「ブランドが傷つく」
などと批判され、
一方地元からは、
「地元の経済がおかしくなるからやめてくれ!」
という反対がありました。
板挟みになった水島社長は、千葉そごうを独立法人化して出店するという奇策を思いつきました。
メリットは
- 現地の人たちを雇えること=地域経済の安定
- 本店に与えるリスクも軽減できる
という一石二鳥の施策。この戦略は大きく当たり、短期間でどんどん出店していくことができました。
そごうが急拡大できた理由は、地方に出店したこともそうですが、「資金繰りが非常にうまかった」ということが挙げられます。
やり方としては以下の通り。
- 出店予定地の土地をあらかじめ買い占める
- 出店する
- 「そごう」ができたことによって買い占めた土地の値段が上がる
- 土地の値段が上がれば資産が増える。
- 資産が増えれば、それを担保にして銀行からお金を借りられる
- 新たな店舗を作っていく(出店予定地の土地を買い占める)
なかなかに戦略的。
成功から失敗まで
順調に規模を拡大していったそごう。日本全国で出店を加速した後には、タイ、香港、シンガポール、台北、ペナンにまで出店しました。
ただしこのやり方には二つの大きな問題がありました。まとめると、
- 各(地方)そごうで経営状態がブラックボックス化していたこと
- 地価が下がった時に資金繰りが急速に苦しくなる
ということです。
1990年以降のバブル崩壊後、日本全体に不景気が訪れ、そごうは立ち行かなくなりました。結局2000年7月、総合グループ各社は一斉に民事再生法申請することになり、事実上の倒産となりました。
失敗から学べること
1に関しては、水島社長がカリスマだったこともあり、「そんな状態でもなんとかなってしまった」ことも後の衰退に拍車をかけました。
やっぱり経営が「一人のスーパー社員」の影響力に頼りすぎると危ないですね。その時は良くても、その人が力を失った時に誰も引き継げない状態になる。
ウォーレンバフェットも、「いずれバカが経営をすることになる。だからバカでもできる仕事を選びなさい」というようなことを言っています(大分乱暴に訳しましたが)。
投資家としては「カリスマ社長が率いる会社」に投資するリスクというものを認識しておかないといけないなーと思います。
2に関しては、最近「中国恒大のデフォルト懸念」が話題になっているように、「資産を担保として借入金を増やす」という行為の是非について考えさせられます。
好景気・不景気の波は必ず来ます。企業はそれを予期して、なおかつ不景気の時にもにしっかりお金が返せるように対策しないといけません。
私の保有するロードスターキャピタルは借入金は多いです…が、そのほとんどは「10年以上」の長期で借りています。
これは「不景気が来た時にも、お金の支払いに慌てないように」という対策です。投資先の企業が「どんな資金調達をしているか」にも焦点を当てて投資先を決定するべきでしょう。
まだまだ面白い内容がいっぱいなので、お薦めの書籍です!
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