ロードスターキャピタルとグリーン電力
2021年7月から8月にかけてロードスターキャピタルより以下の IR が発表されました。
これを見た当時は「ふーん」という感想でした。「グリーン電力か。環境に優しい取り組みをするんだねー」って思うだけ。
これがロードスターキャピタルにとってどんな意味があるか?ていうのをあまり深く考えなかったです。
でも調べてみるとこのIRは意外と奥が深そうだったので、以下に紹介します。まずはロードスターキャピタルが業務提携を結んだafterFITのことから。
afterFITって何?
そもそもafterFITってどんな会社なんでしょうか?ホームページを確認してみました。
アフターフィットホームページより。おしゃれ。
AfterFITは、「グリーン電力を作り、その販売をおこなっている」会社。
同社は電力小売サービスとして「しろくま電力(パワー)」を運営。白くま電力は「実質 co2排出ゼロのグリーン電力」。
しろくまパワーは追加料金なしで、電力を再生可能エネルギー由来のものに変更できるそう。
ロードスターキャピタルの発表にも、
今回の業務提携においても、これまでロードスターキャピタルが契約していた電力会社と同等の料金でグリーン電力を供給。コスト面で需要家の負担を増やすことなく、実質CO2排出ゼロの電力へのアクセスを実現します。
IRより!
とあり、ロードスターキャピタルが保有する一部の物件において、実質 co2排出量ゼロの電力を提供できるそう。
電力が切り替わる物件は以下の通り(2021年8月現在の情報)。
これにより、 CO2 の排出量を年間で300トンから400トン程度削減できるとのこと。
そこで気になるのは…
「それがどうかしたの?」
ということですね。早速考えてみましょう!
日本のCO2排出量とロードスターキャピタル
Co2を400%減らすというのはどのくらいのインパクトがあるんでしょうか?少し古いデータですが、日本の2019年度の二酸化炭素排出量は以下の通り。

日本における2019年度CO2排出量は11億794万トン。300トンから400トンという数字はその数量に対して約0.00003%。あまりに微々たるものです。
年間400トン削減したからといって、インパクトはそこまで大きくないようですね。
もちろん倫理的に、「 CO2排出量は減らさないといけない」ということは理解できます。これからの世の中、求められるのは当然。
でも頭の片隅には「わざわざアピールするほど、重大なことだろうか?」という疑問も浮かびます。
それは、これを見た人たちが「ロードスターキャピタルの株を買ってくれるようになるのだろうか?」という疑問と言い換えてもいいかもしれません。
事実、IR発表後も市場は冷静で、株価も特に変化はありません。
ではいったいなぜ、ロードスターキャピタルはこの業務提携を行なったのでしょうか?
CO2の削減メリット
いろいろ調べてみた結果、どうやらRE100というものがひとつのキーワードとしてあげられそうです。
RE100 とは?
RE100は、The Climate GroupとCDPによって運営される企業の自然エネルギー100%を推進する国際ビジネスイニシアティブです。
企業による自然エネルギー100%宣言を可視化するともに、自然エネの普及・促進を求めるもので、世界の影響力のある大企業が参加しています。
ホームページより引用
RE100とは、「再生可能エネルギーの普及に努める国際団体」。2021年現在、世界では300社程度企業が加盟しています。
加盟企業は「20XX年までに事業すべてを100%再生可能エネルギーで行う」という目標を決めて、加入することになります 。
特筆すべきは、世界の大企業が加盟しているということ。 代表的な企業を挙げると以下のような感じです。
- アップル
- Microsoft
- Amazon
- ゴールドマンサックス
- JP Morgan
- ウォルマート
日本でこの団体に加盟する会社は、合計56社(2021年7月現在)。RE100 日本企業最新リスト 56社 [2021.7.5改]・脱炭素社会への期待|コラム|メンバーズ
日本においても加入している企業のほとんどが大企業で、代表的な企業(到達目標時期)は
- リコー:2050年
- 積水ハウス:2040年
- アスクル:2030年
- 大和ハウス:2040年
- ワタミ:2040年
- イオン:2050年
- 城南信用金庫:2050年
- 丸井グループ:2030年
- 富士通:2050年
- エンビプロ・ホールディングス:2050年
などなど。2017年4月にリコーが参加を表明したのを皮切りに、どんどん増えているようです。
RE100とロードスターキャピタル

上記の RE100加盟している企業は、何とかして「 CO2排出量を削減したい」と思っているわけです。
また Apple は2030年までに「使用する全ての電力を再生可能エネルギーにする」と公言しています。
そして「取引先に対しても同じように再生可能エネルギーで電力を賄うように求める、それが出来なければ取引しない」というようなことも行う方針のようです。
再エネ普及のカギはエネルギーデモクラシー?(日本テレビ系(NNN)) – Yahoo!ニュース
そのような企業が今後、増えていくとしたら。
RE100に加盟している企業がオフィスを探す時、 候補になるのは「すでに100%グリーン電力が使われているビル」。
自分で電力をグリーン電力に変えるのは少し手間ですから。
ロードスターキャピタルは都心のビル転売で儲けることができています。既に所有している物件がグリーン電力100%で電力供給されているなら、RE100加盟企業にアピールできるということです。
そういった付加価値をつけるために、ロードスターキャピタルは「グリーン電力」を使用したビルを増やしているのだと考えます。
まあもちろん純粋に二酸化炭素の排出量を削減したいという気持ちもあると思いますが。
さいごに
CO2の削減は、これからの世の中に求められることです。
また世界的にも「ESG投資」の機運も高まっており、ESG を達成できない企業には、投資資金が回って来ない可能性もあります。
ESG全盛の時代へ、欧州主導の基準には違和感–日本の環境技術に逆風(ZDNet Japan) – Yahoo!ニュース
今回のロードスターキャピタルの「グリーン電力採用」の取り組みはすぐに結果が現れるものではないと思います。が、でも長期的に見れば社会に必要なもの。
長い目で見て、どうなるかを見守っていきたいと思います。
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