デコルテホールディングスについて

2021年6月に上映上場したデコルテホールディングスが気になりますので自分なりにまとめてみました。

きっかけは Twitter でインベストトラベラーさんが呟いていたことから興味を持ちました。インベストトラベラーさん、機会をありがとうございます(ご覧になってくれたらうれしいですが)。

早速どのような会社か見ていきたいと思います。

フォトウェディング業界とデコルテホールディングス

デコルテホールディングスは、「フォトウエディング」を専業とする会社。 フォトウェディング撮影検索でナンバー1のリーディングカンパニー。

当社ホームページより。

ただし、撮影件数のシェア率自体は2018年で13.4%。業界的に競合が多数存在し、まだまだ圧倒的なガリバーは存在しないセクターとなっているようです。

また日本の婚姻数は年々減少を続けており、 2018年で58.6万組。 人口が減り続ける日本で、これ以上マーケットが拡大していくことは考えにくく、ある意味で衰退していく市場であるともいえます。 

当社ホームページより。

ただしフォトウェディング市場に限定すると、まだまだマーケットは拡大傾向にあるようです。

同社ホームページによると、日本でフォトウェディングサービスが広まり始めたのは2008年頃。同社がまとめた Google トレンドを見てみるとフォトウエディングの注目度が上昇していることがわかります。

当社ホームページより。

では、フォトウエディング業界の需要はどうなっている?ということが気になります。同社はフォトウェディング業界の構造として、以下を公開しています。

日本の婚姻数58.6万組のうち、結婚式を挙げる方が38万組。そのうち別撮りをし、かつ専門業者に依頼するのが8.2万組

結婚式を挙げないのは20.6万組。そのうち専門業者に別撮りをお願いするのが6.4万組。よって、現状のターゲット組数は8.2+6.4≒14.7万組

また別撮り一組あたりの単価は、市場規模÷組数≒16.8~16.9万円とわかります。また、デコルテホールディングスが新たに開拓していくターゲット層が13.6+16.2≒29.8万組とあるので、

29.8×16.8≒500億円が潜在的なマーケットとして存在する。

現在のデコルテHDのターゲット市場と合わせると約750億円の市場があるということになります。

デコルテホールディングスも、市場の拡大に伴い2011年から成長をしてきたことが業績推移からも読み取れます。(コロナの影響を受け2020年・2021年は一時的に減収減益。)

成長してきたと言っても、21年9月期の売上高は46億円程度。市場規模と比較すると、まだまだ成長の余地はあると考えられます。もちろん競合はひしめいている状況ですが。

ただし、フォトウエディング市場の拡大も限界がある。同社が2021年11月に公開した中期経営計画では、フォトウエディングサービスの成長の他に、ライフフォトカンパニーを目指す、とありました。 

同社中期経営計画より。

フォトウエディングの店舗数を拡大していくと共に、アニバーサリーフォトを提供する「ハピスタ」 の出店を見込んでいます(店舗数推移より)。

2022年9月期は4店舗、2023年9月期は9店舗、2024年9月16店舗の増加(それぞれ前年比)を見込んでおり、 成長が続くであろうということが見えてきます。

そこで気になるのは、成長していく最中、利益はどうなるのか、ということです。 一般的には新規出店費用がかさむことで、どうしても利益が圧縮される傾向にあるからです。

しかし同社の描く中期経営計画では、利益の圧縮をほとんど見込んでいません。

資料より作成

この計画が楽観的しすぎやしないか、は投資をするにあたっては注視していかないといけないポイントだと思います。ですが現在のところ、デコルテホールディングスは成長に当たって利益を押し下げると見込んでいないのはプラスです。

また同社は店舗収益モデルとして以下のような表を公開しており、かつ、店舗をどのように増やしていくのかを公開しています。 IR に積極的な姿勢を見せていることが伺えます。

投資家の立場としては、「異なるタイプの店舗を増やした時に、どのような売上貢献があるのか」ある程度予想・比較ができるので、評価されるポイントだと思います。

デコルテホールディングス:計数管理の重要性

決算説明会や中期経営計画、上場上場時に提出する事業計画及び成長可能性に関する資料を読みながら感じたのは、「かなり細く数字を開示している」ということ。

以下には、デコルテホールディングスが相手している資料を抜粋して載せます。

同社決算説明資料、事業計画及び成長可能性に関する資料より抜粋 

上記はあくまで開示された資料の一部ですが、この資料たちを見るだけで、「フォトウェディング業界が大体どのような状況か」 というのがわかってしまう。そのぐらいよくできていると感じます

比較のため、いずれ競合他社になるであろう領域の大手、スタジオアリスの決算説明資料 、事業報告書にはどのようなことが書いてあるのかを確認しました。

以下スタジオアリス

スタジオアリス決算説明資料及び事業報告書より抜粋

情報がなんとなく画一的と言うか、事業規模などがあまり見えてきません。それに比較して デコルテホールディングスが捉える事業規模等は、現在の数字に則って考えられているものであります。

このことからも、デコルテホールディングスはより具体的な数字を元にした経営を行っているのではないかと推測できます。

では、なぜデコルテホールディングスがここまで計数を詳細に示しているのか?という疑問が湧いてきます。 ここは私の推測になりますが、大株主のキャス・キャピタルファンドの存在が大きいと考えています。 

デコルテホールディングスとキャス・キャピタルファンドの関係

キャスキャピタルファンドはデコルテホールディングスの大株主として、87%以上の株式を保有しています。 ちなみにその他の株主は社長、子会社社長、会社の成長を支えるフォトグラファーなどとなっています。

新規公開時有価証券報告書より

またキャスキャピタル株式会社のホームページ(http://www.cascapital.com/index.html:今時httpsではない)で、デコルテホールディングスの上場時にお知らせを掲載していました。以下に一部抜粋して載せます。

上記の文章からわかることは、

  • 2017年1月にデコルテホールディングスの投資を開始したこと
  • デコルテの成長を支えるために、計数管理の導入による営業力の強化を行ったこと
  •  Web チームの内製化による集客力(SEO)の強化を行ったこと 
  • 一部事業の売却・譲渡を行ったこと

です。

また、新規上場時に出されている、事業計画及び経営成長可能性に関する資料の沿革を見てみると、過去にウェディングフォト事業以外のサービスから撤退していることがわかります。

コロナ禍以前(2018年)より、市場の縮小が見込まれる結婚式ほとんどの事業から戦略的に撤退していることがわかりますます。

上記より、

  • キャスキャピタルファンドの指導により、より計数を意識しての経営が行われるようになった
  • キャス・キャピタルファンドの投資を受けたことで、フォトウエディング事業が本格的にデコルテホールディングスの主軸となった。

と考えることができます。

ちなみに、事業計画及び成長性に関する資料の中には、推計フォトウェディング利用者数を算出するのに以下の式を使っていることを公表しています。

私は「算式を公表する」ということを、「投資家へのアピール」という風に捉えています。

企業が算出式を公表することは、「われわれの業績を投資家が個別で予想してもらっても構わないですよ」というメッセ―ジであると思うからです。

ここまで投資家よりにメッセージを送っている企業は、私の経験では記憶にあまりありません。(最近ではグッドスピードさんなどが積極的に IR をしているという印象があるぐらいです)

ここまでするのは、おそらくキャス・キャピタルファンドの働きがあったのではないかと思います。今後も投資家へ積極的に情報開示していくことを考えれば、必然的に投資家の目に止まることも多くなると予想されます。これは大きくプラスです。

ただし気になるのは、キャス・キャピタルファンドがいつ EXIT するか。87%という比率は半端ではなく、大きな影響を及ぼしそうではあります。

やさしい IPO 株の始め方(https://www.ipokiso.com/company/2021/decollte.html) でロックアップ期間を調べてみると、キャス・キャピタルファンドは360日間oor1.5倍とのこと。

やさしい IPO 株始め方より抜粋

公募価格は1720円だったので。1.5倍は 2580円。現在の株価は1000円前後なので、十分に余裕があります。投資にあたっては、一応この辺も覚えといた方がいいかなと感じているところです。

のれんの認識について

デコルテホールディングスの貸借対照表には、のれんとして約56億円計上されています。日本会計基準であれば、毎年いくらかの額を20年以内に償却していかなきゃいけないので、当期純利益が押し下げられる形になります。

しかしデコルテホールディングスは IFRS: 国際会計基準を採用しているため、毎期にのれんの償却の必要がありません。

なのでデコルテホールディングスは国際会計基準を採用しているのだと思いますが、これもキャス・キャピタルの働きかけがあったのではないかと思ってます。

デコルテホールディングスが国際会計基準に移行したのは2018年からなので。 ちなみに2019年9月期の業績は、日本基準の会計方式では赤字になります(新規公開時の有価証券報告書より以下)。 

のれんを償却しないことでここまで変わるんだなぁと、改めて実感しました(勉強になりました)。

ここまでのまとめ

  • デコルテホールディングスは「フォトウエディング事業」を中心とする会社
  • 日本の婚姻数は年々減少傾向であるが、フォトウェディングに関しては、成長余地がまだまだある。
  • デコルテホールディングスの開示内容は他社よりも詳細であり、より投資家目線での開示をしている。
  • 多額ののれんが計上されているため、国際会計基準で財務諸表を作成するメリットが大きい。

こんなところでしょうか。いずれにしても興味深い企業としてウォッチしていきたいなと思います。

コメント

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