倉庫・運輸関連業10社比較:三井倉庫HDに注目

倉庫に関係するこの時期は持っていませんが、最近興味が湧いてきたので、「OO倉庫」という銘柄で比較を行ってみました。

今回比較の対象としたのは、

  • 三菱倉庫
  • 三井倉庫ホールディングス
  • 住友倉庫
  • 澁澤倉庫
  • 東陽倉庫
  • 杉村倉庫
  • 丸八倉庫
  • 中央倉庫
  • 川西倉庫
  • 安田倉庫

の10社。これだけの企業を詳細に比較検討はできないので、気になるところだけをコメントして行くスタイルで、検討します。

毎度おなじみのバフェットコードの機能を使って比較していきます。

倉庫・運輸関連業10社比較

PERを比較すると、三井倉庫ホールディングスの PERが4.8倍と一番低くなっています。平均値は11.4倍、中央値が10.9倍ということを考慮すると、4.8倍という数字は上昇余地が見込めるのではないでしょうか。

この時点で三井倉庫ホールディングスに少し注目。

PBRを比較すると、どの会社も1倍を切っており、資産価値よりも評価されていることがわかります。倉庫って大きいですからね。資産が大きくなるのもしょうがないですね。

3年間の株価上昇率は、どの企業も3年前とあまり変わっていないようです。 平均-3.9%と、元気のないセクター。。 そのぶん配当利回りは2.6パーセントとそこそこあります。

続いて配当性向。10社の平均値は23.9%ですが、三菱と三井は10%弱ですね。この辺の企業は配当性向を引き上げる余地ありで、今後増配の期待があります。

営業利益率の平均値は7.1%。丸八倉庫の15.7%がかなり高いのが気になりますが、どうやら不動産賃貸収入が大きいようです。

営業利益率に占める支払利息も、一部の企業を除けばほぼ5%と程度で横ばいです。借金しながら事業を回していることが伺えます。

個人的に注目したい ROE 関連の指標。 ROE が10%を超えているのは、三菱倉庫と三井倉庫のみ。

三菱倉庫が高い収益性でROEを高めているのに対し、三井倉庫回転率、財務レバレッジをかけることで ROE を高めています。

二社において戦略が異なることが示唆されます。比較検討項目になるかも。 

ROICに関しては、三菱倉庫の倉庫の記載がありませんが、この中では三井倉庫が一番高い結果に。ROEがこの中で一番高いのも含めて、自分の中の評価は高まります。

有利子負債。 三井倉庫が著しく自己資本比率が低いのが目立ちます。 ROE の分解項目でも、財務レバレッジをかなり効かせていましたので、 予想できたことですが。

ただし総資産に占める有利子負債は43.7%と、他の会社よりも10~20%高い程度になっています。 利子も営利に占める割合が飛びぬけ高いわけでもありませんでしたし、あまり心配はいらないのかも。

営業キャッシュフロー。どの企業もアクルーアルはマイナスで、純利益よりも現金が多く残る業態ということがわかります。理由はどの企業も減価償却費がかなりかかるからで 、粗利に対しての減価償却費は10社平均だと46.7%。

三井倉庫ホールディングスの減価償却費が粗利に対して低いことは目立ちます。どこに原価がかかっているのかは気になるところ。

どの企業も基本的に営業利益額以上に設備投資等にお金をかけているのですが、三井倉庫は設備投資そんなにお金をかけていません。なぜでしょう?

以上の比較から、三井倉庫ホールディングスにあたりを付けて企業分析を進めていきたいと思います。気になる理由としては

  • PER が低い
  • ROE が高い
  • 財務レバレッジをかけてROEを高めている
  • 減価償却費がそこまで大きくない
  • 他社と比較して設備投資などにお金をかけていない

というところです。 

三井倉庫ホールディングスについて

では改めて三井倉庫ホールディングスについて見てみます。

売り上げはなだらかに伸びています。2017年に赤字決算だったようですが、むしろ利益率を高めています。 何か改革があったんでしょうか? ROEも2018年以降は改善されてきているようです。

セグメントの内訳を見てみると、売上のほとんどは物流事業ですが、不動産の利益が約60%と高いです。物流も直近では利益率が上昇しており、今後もこの利益成長が続くのかどうかは期待するところであります。

比例縮尺財務諸表を見てみると、 BS と PL の大きさはほぼ同じ。これは物流倉庫の業態では珍しいようです。 

ちなみに三菱倉庫のものを下に載せます。

三菱倉庫は資産を積み上げて収益を得るスタイルですね。両者にはどのようなビジネスモデルの違いがあるのでしょうか?

両社の間で大きく違うのは不動産賃貸事業の売上。 三井倉庫ホールディングスの不動産賃料収入が売上の3%程度に対し、三菱倉庫のそれは10%程度あります。

三井倉庫ホールディングスが保有する建物+土地:1280億円に対し、三井倉庫のそれは2650億円と、倍以上あります。

この有形固定資産の差が 収益のもととなる事業の差を表しています。

三井倉庫ホールディングスの抱える不動産

有形固定資産の話が出たので、三井倉庫ホールディングスが持っている不動産の時価について、有価証券報告書を見てみます。

三井倉庫の設立は70年前以上。その頃に土地を取得しているのなら、相当な含み益があるはず。 実際に確認してみると… 

貸借対照表の簿価350億円に対して、1530億円もの時価!この資産だけで、現在の時価総額の2倍以上あることになります…恐ろしい。

コロナ禍での物流需要の高まりにより、今期の業績も好調ですし、バリュー株投資として、検討しても良いレベルなのではないかと思えてきました…

商船三井が買収する予定のダイビルもそうですが、日本にはまだまだたくさん資産バリュー株が眠っているのでしょうね。

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